いや、俺も知らなかったんだけどさ。
……いや、ウソつくのやめるわ。俺はトラック乗りだから知ってた。
でも「意外とみんな知らないんだな」って気づいたのは最近の話。
この前、高速を走ってたら後ろからベタつきであおってくる乗用車がいたんだよ。
パッシングまでされてさ。
こっちだって出したいよ。
でもな、大型トラックは時速90キロ以上出せないんだよ。
「は? なんで?」って思うだろ。
実は大型トラックにはスピードリミッターっていう装置がついてる。
時速90キロで頭打ちになるように、法律で義務づけられてるんだ。
今日は「なんでトラックは遅いのか」「なんで追い越し車線で並走するのか」、
その理由をぜんぶ話すわ。
まあ缶コーヒーでも飲みながら聞いてくれよ。

この記事を書いた人
長距離トラック歴20年。中卒だけど、なぜかFP2級を持ってる変わり者。
缶コーヒー片手に「え、なにそれ?」と気になったことを調べて「へぇ〜!」を届けるブログを運営中。
むずかしいことをかんたんに、後輩に話すノリで書いてます。
大型トラックには「時速90キロの壁」がある
スピードリミッター(速度抑制装置)ってなに?
スピードリミッターっていうのは、正式には「速度抑制装置」って呼ばれる装置だ。
仕組みはシンプル。
時速90キロに達すると、エンジンへの燃料供給を自動で絞る。
どんなにアクセルを踏んでも、90キロより上には加速しなくなる。
たとえるなら、アクセルに「ここまで」って見えない壁があるような感じ。
踏み込んでも、スッと力が抜けるんだよ。
ちなみにリミッターを勝手に解除したり取り外したりすると不正改造になる。
道路運送車両法にもとづいて、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金だ。
つい最近もニュースになってたけどさ、「外しちゃえばいいじゃん」とかいう話じゃないんだよな。
対象は車両総重量8トン以上のトラック
この装置がつけられるトラックには条件がある。
車両総重量8トン以上、または最大積載量5トン以上の大型貨物自動車が対象だ。
車両総重量っていうのは、車体の重さに荷物と人の重さを全部合わせたもの。
8トンって聞いてもピンとこないかもしれんけど、コンビニに荷物を届けてるような中型トラック以上のサイズだと思ってくれればいい。
俺が乗ってる長距離の大型トラックはもちろん対象。
高速道路を走ってる大型トラックは、ほぼ全部この装置がついてると思っていい。
ちょっと豆知識
大型トラックの後ろをよく見ると、黄色い丸いステッカーが貼ってあるのに気づくかもしれん。
「速度抑制装置付」って書いてあるやつ。
直径130ミリ以上の丸いステッカーで、車両の後ろと運転席の中にも貼る決まりになってる。
今度トラックの後ろについたとき、ちょっと探してみてくれ。
なぜリミッターが義務化されたのか?その背景
2003年の義務化、きっかけは高速道路での重大事故
スピードリミッターが法律で義務化されたのは、2003年(平成15年)9月のこと。
背景にあったのは、高速道路での大型トラックによる重大事故の多さだ。
いや、俺も知らなかったんだけどさ……1998年ごろの話だけど、当時、高速道路での死亡事故原因の2割強を大型トラックが関わっていたと言われている。
しかもそのうち約半数が追突事故だったそうだ。
大型トラックは車体が重い。
スピードが出た状態で追突すると、被害はすさまじいことになる。
過積載が横行していた時代はなおさらだと思う。
重大事故を減らすために、90キロ以上出せなくする装置の装着が決まったわけだ。
最初は新車だけが対象だった。
でも2006年8月末までの経過措置を経て、対象となる大型トラックぜんぶに装着が完了したとされている。
リミッター導入後、死亡事故は約40%減った
で、調べてみたらさ……これがビックリなんだけど。
国土交通省の調査によると、リミッター導入後の2005年(平成17年)の大型貨物車の高速道路での死亡事故件数は、1997年〜2002年の平均とくらべて約40%減っていたらしい。
もちろん、リミッターだけが理由とは言いきれん。
ほかの安全対策や道路環境の改善もあるだろう。
ただ、国土交通省の効果・影響評価検討会では「一定の低減効果がある」と評価されてるんだよな。
さらにCO2の排出量削減にも効果があるって報告もある。
速度が下がれば燃費が良くなるから、環境面のメリットもあるようだ。
高速道路でトラックが並走する「あの謎」の正体
リミッターがあるから追い越しに時間がかかる
高速道路で「トラックが2台並んで走って、車線をふさいでる」って場面を見たことないか?
イライラする気持ちはわかる。
でもあの並走には、ちゃんと理由がある。
さっき話したとおり、大型トラックは全部90キロが上限だ。
追い越す側も追い越される側も、ほぼ同じスピードしか出せない。
たとえば88キロで走ってるトラックを、89キロのトラックが追い越そうとする。
速度差はたった1キロ。
100メートル走で0.5秒差の二人が並んで走ってるようなもんだ。
追い越しにものすごく時間がかかるんだよ。
全日本トラック協会も「不要不急の車線変更はしないように」と指導してる。
それでも、荷物の到着時間やのぼり坂の速度差なんかもあって、追い越しが必要な場面はどうしても出てくる。
ドライバー同士も「申し訳ないな」って思いながら走ってることが多いんだよな。
俺も追い越しに時間がかかりそうなときは、あきらめて走行車線に戻るようにしてる。
法定速度は上がった。でもリミッターはそのまま。
ここがビックリ
2024年4月1日から、大型トラックの高速道路での法定速度(法律で決まっている最高速度)が
時速80キロから90キロに引き上げられた。背景には「物流2024年問題」がある。
ドライバーの労働時間規制が厳しくなって、輸送効率を上げる必要が出てきたからだ。ところが、スピードリミッターの上限は90キロのまま据え置き。
つまり「法定速度=リミッター上限」っていう、余裕ゼロの状態になったんだよ。
たとえるなら、テストの合格点が90点に上がったのに、
取れる最高点数も90点しかないような話。
ギリギリもギリギリだよな。
この「ねじれ」は、警察庁の有識者検討会でも「速度抑制装置の上限速度を維持することを前提に」と明記されていた。
つまり、リミッターの90キロはそのまま変えないことを最初から決めたうえで、法定速度だけを引き上げたかたちだ。
ドライバーとしては正直、ちょっとモヤモヤするところもある。
でもまあ、安全のための装置だからな。
俺は「まあ、そういうもんだ」と思って走ってるよ。
まとめ──トラックが遅いのには理由がある
ここまで読んでくれてありがとな。
ちょっと整理しておくと、今回の話のポイントはこうだ。
大型トラックには2003年からスピードリミッター(速度抑制装置)の装着が義務化されていて、車両総重量8トン以上のトラックは時速90キロ以上物理的に出せない。
高速道路でトラック同士が並走するのは、お互いリミッターで速度差がほとんどないからだ。
しかも2024年4月に法定速度は80キロから90キロに上がったのに、リミッターの上限はそのまま。
トラックが遅いのは、サボってるわけでも、わざとやってるわけでもない。
「出したくても出せない」っていう仕組みの話なんだよ。
今度高速を走るとき、大型トラックの後ろにある黄色い丸いステッカーをちょっと探してみてくれ。
「速度抑制装置付」って書いてあるから。
さっきのテストの話じゃないけどさ、「あいつは90キロが限界なんだな」って思ってくれたら、ちょっとだけやさしい気持ちで追い越してもらえるかもしれん。
参考情報・出典
- 国土交通省「速度抑制装置の装着に関する経過措置期間の終了について」(平成18年9月1日)
https://www.mlit.go.jp/kisha/kisha06/09/090901_.html - 国土交通省「不正改造の具体例(速度抑制装置の解除・取り外し)」
https://www.mlit.go.jp/jidosha/jidosha/tenkenseibi/huseikaizou/h1/h1-2/
